あらすじ
四十八歳の会社員・高城修一は、ある日突然、剣と魔法が存在する異世界へと迷い込む。
若返ることもなければ、強大な魔法を授かることもない。剣術の経験もなく、魔力もほとんどゼロ。そんな修一を待っていたのは、魔王討伐のために選ばれた若き勇士たちだった。
そして街の広場で、修一は奇妙な石碑《天命録》を目にする。
そこには勇士たちの名とともに、なぜか自分の名前が刻まれていた。
さらに修一にだけ見える、赤い文字。
――死刻、三十日後。
自分は三十日後に死ぬ。
その意味も理由も分からないまま、修一は勇士たちと旅に出ることになる。
やがて彼は、自分以外の人間にも「死刻」が見えることに気づく。
まだ元気に暮らしている人。
家族と笑っている人。
明日も当たり前に生きるつもりの人。
その名前のそばにだけ、静かに刻まれる死の予定。
もし事前に知ることができるなら、その死を防ぐことはできるのか。
そして、死刻を逃れたその先には何が待っているのか。
正義感の強い若き剣士レオン。
明るい回復術師フィーネ。
口は悪いが仲間思いのガイル。
冷静な魔導士ミレイア。
個性も考え方も違う仲間たちと旅をする中で、修一は少しずつ、この世界に隠された違和感へ近づいていく。
なぜ人の死があらかじめ刻まれているのか。
誰がそれを決めているのか。
そして、なぜ異世界から来た自分の名が《天命録》にあるのか。
剣も使えない。
魔法も使えない。
特別な力もない。
あるのは、四十八年間、人と向き合って働いてきた経験だけ。
これは最強の勇者が魔王を倒す物語ではない。
「誰かの命を選ぶ」ということに、普通の会社員が向き合う異世界ファンタジー・ミステリー。
死亡予定まで、あと三十日。