あらすじ

「この宿に泊まった占い師は、鑑定が変わるらしい」 そんな噂に導かれ、新月の夜、タロット占い師の水瀬は山奥の小さな宿を訪れる。 宿の主人は穏やかで親切だが、どれほど見つめても、その心には感情の揺れが見えない。客を歓迎しながらも何かを教えようとはせず、ただ目の前のものを見つめ、必要な時が来るまで静かに待っている。 焼きたての林檎のパイ、囲炉裏で焼かれた岩魚、手間をかけて作られた栗の渋皮煮。宿で過ごすうち、水瀬は主人の「急がず、ただ見る」という不思議な在り方に触れていく。 その頃、水瀬は一人の男性客を救おうとしていた。けれど、どれほど正しい言葉を伝えても、彼の心には届かない。 なぜ、この人は変わろうとしないのか。 焦りを募らせた水瀬は、宿の奥にある「声を聴くための部屋」へ足を踏み入れる。そこで聞いたのは、特別な存在からの啓示ではなく、これまで見ないようにしてきた自分自身の声だった。 人を助けたいという思いに、何が混じっていたのか。 救いたかったのは、本当は誰だったのか。 これは、特別な力を得るために宿を訪れた占い師が、答えを与えることを手放し、相手の言葉を待つことを覚えていく物語。 山奥の不思議な宿を舞台に、人の心と、見えない存在の声を静かに描く連作小説。

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小説を読もう2026/08/15
  • 現在の作品悩みを抱えた客だけがたどり着く宿で、僕はあなたを守る者の声を聴く ~答えを教えない、不思議な宿の六つの物語~