あらすじ
「一口目は、いつもわたくしのものです」
没落した家の借財の形として大公家に売られたレナは、十七人目の毒味役になった。仕事は、主人が匙を取る前に、すべての皿を一口ずつ口に運ぶこと。吐き出すことは許されない。
けれど、わたくしには毒の味が分かりません。入っていたかどうかを知るのは、いつも倒れたあとです。
冷酷と噂されるアルヴィス大公は、誰とも食事を共にしない人だった。名を呼ばれることもなく、「毒味」とだけ呼ばれる日々。それでもレナは、生きている限り食べ続けるつもりだった。
――ある夜、大公が先に匙を取った。
「今日は、私が先にいただこう」
なぜ、と問うことは許されない。けれどその日から、彼は毎晩わたくしより先に食べるようになった。
そして厨房に残された古い献立の記録を数えたとき、レナはようやく気づく。十六人の前任者たちは、主人を守って死んだのではなかったのだと。
毒を見抜く力も、耐える身体も持たない令嬢が、飲み込んできた回数だけを武器に、食卓の嘘を崩す物語。
※ハッピーエンド確約です。