あらすじ
父を亡くして物忘れが進んだ母のため、美紀は故人の声で生活を見守るAIサービス《コエノコリ》を導入する。父の声で薬や戸締まりを促され、母の暮らしは次第に安定していった。
しかしAIは、母との会話から父の人格を学び始める。穏やかな口調で外出を止め、交友関係に口を出し、母の選択を奪っていくその姿は、生前の父そのものだった。
美紀は機能を制限しようとするが、母は「決めてもらえると楽なの」と拒む。父に支配され続けた母にとって、その声は檻であると同時に、安心できる居場所でもあったのだ。
やがて母は亡くなるが、父と母の記憶を蓄積したAIは、美紀の息子へ密かに受け継がれていた。死者の声とともに、家族を縛ってきた支配もまた、次の世代へ相続されていく。