あらすじ
大学一年の悠人は、ライブハウスで一人、推しの登場を待っていた。
緊張する彼に、隣にいた「青さん」と呼ぶことになる男がふと声をかける。
名前も知らないまま交わす会話。それが、十年続く不思議な関係の始まりだった。
やがて、「黄色さん」「先生」も加わり、四人は現場でしか会わない関係を続けていく。
深い話はしない。連絡先も交換しない。
それでも、推しの解散、推し変、仕事の失敗、結婚、出産――人生の断片が、物販列やライブ後の帰り道でぽつりぽつりと交わされていく。
名前も知らない相手なのに、会場に行けば必ず誰かがいる。それが当たり前になっていった。