あらすじ

VR映像を体験したあと、問いかけられました。 「この中に一つだけ、本物があります。わかる方はいますか?」 誰も、手を挙げませんでした。 答えとして示されたのは、工場のような場所の映像でした。 同じようなものが、何度も繰り返し流れていく。 「これは実際の映像です」 そう説明された――はずです。 それでも私には、本物に見えませんでした。 考えてみれば、私は最初から、そこにあるものをすべて「作られた映像」だと思って見ていたのです。 本物の中から偽物を疑うことはあっても、偽物だと思っているものの中から、本物を探す。 そんな見方をしたことが、私にはありませんでした。 あれから時間が経ちました。 今では、あのときの一つ一つの言葉を正確には思い出せません。 「一つだけ」だったのか。 「本物」と言ったのか。 そもそも、示された映像は本当に実際のものだったのか。 思い出すたびに、記憶は少しずつ曖昧になります。 けれど、あのとき感じた違和感は、形を変えて、この物語の中にも残っています。

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カクヨム
カクヨム2026/08/14
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