あらすじ
その答えを体現する、異形の「死神」がいた。
月影光(23)。東京S球団所属。
高校卒業後、ドラフト最後の一枠で拾われたものの、プロの世界は冷酷だった。
一軍に上がるどころか、二軍の底で惨めな三振を繰り返すだけの日々。
「ドラフトの無駄遣い」「早くクビにしろ」
一軍の華やかな舞台すら踏めぬまま、戦力外通告を突きつけられるのは火を見るより明らかだった――。
そんな絶望の淵に立たされた男が、生き残るために選んだのは「プライドをすべて捨てる」という血の滲むような茨の道だった。
数年後。
年間スタッツは、352打数、66安打、1本塁打、120打点、150四球。
打率は相変わらず、二軍で溺れていた頃と変わらない「1割台」。
なのに、一軍へと這い上がった彼が打席に立つだけで、他球団の全バッテリーは恐怖に震え上がった。
彼は、バットをほとんど振らない。
相手投手の勝負球を執拗に、ミリ単位の技術でファウルにしてカットし続ける。
「歩かせたら前年の打点王に回る。勝負にいけば15球粘られて指先の感覚を破壊される」
その地獄の二択を前に、名将と謳われる敵将すらもプライドを捨て、前代未聞の【9回裏満塁での申告敬遠】を選択した。
無数の豆でボロボロになった両手で、チームの汚れ役を一手に引き受ける。
二軍の闇から這い出た男の「死神のシステム」は、やがて球界のルール、メディア、ファン心理の深淵までも蹂躙し、球界全体の勢力図を大炎上させていく――。
だが、グラウンドを震撼させる死神も、一歩家を離れれば、オリンピック候補だった最強の幼馴染の妻・結奈に完全に尻を敷かれた、ただの不器用な恐妻家だった。
「もしも他球団に移籍したら、あなたと移籍先の走塁をデータで丸裸にするわよ(ふふふっ)」
「ひ、ひぃぃぃぃ……っ!」
球場を恐怖に陥れるダークヒーローが、我が家ではヒエラルキー最下層!?
そんな不器用な男のプロ野球人生を語る小説ここに開幕。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体、球団、番組等とは一切関係ありません
登場人物はこちらになります。
https://kakuyomu.jp/users/ikezawa-yoshitomo/news/2912051606153594636