あらすじ
夢を諦めたんじゃない。
奪われたのだ。
二十九歳の瀬名里帆は、海沿いの町のスポーツ用品店で働いている。
かつては実業団ソフトボールのエース。日本代表候補にまで名前が挙がった投手だった。
しかし、肩の異変を抱えたままマウンドへ送り出され、選手生命を絶たれた。
チームから居場所を失い、背番号「1」も、未来も、ソフトボールへの情熱も置き去りにして七年。
そんな里帆の前に現れたのは、弱小女子ソフトボール部でコーチをする元プロ野球選手・黒瀬蒼真と、マウンドに立つたび「ごめんなさい」と謝る一年生投手・朝倉芽衣だった。
「あなたの球は、ちゃんと人を黙らせる力がある」
芽衣に投球を教えるうち、里帆の中で、終わったはずの時間が再び動き始める。
だがその前に現れたのは、里帆が壊れたあの日、最も近くにいた元バッテリー――神崎美羽。
さらにSNSには、里帆を「過去の恨みで高校生を利用する元選手」と中傷する投稿が広がって……。
奪われた夢は、取り戻せるのか。
それとも、人は別の場所からもう一度始められるのか。
傷ついた元エースと、逃げ癖のある少女。
二人がもう一度マウンドに向き合う、再生のスポーツドラマ。