あらすじ
母方の叔母は、いわゆるイタコだ。
中学二年生の夏休み。
叔母は私の後ろを見ながら、奇妙なことを言った。
「向こうのもんと目が合うても、見えとるって悟られたら駄目や」
そんなの、ただの迷信だと思っていた。
帰りの駅で、赤い女を見るまでは。
誰にも見えていない女。
人の耳元で何かを囁く女。
そして私は、その女と目を合わせてしまう。
あの日から。
私の人生は、あっちとこっちの世界の狭間に迷い込んでしまった。
見えることが怖いんじゃない。
――向こうに「見える」と知られることが、怖いのだ。
「あんた、こっちに来られ」
叔母の言う「こっち」は、本当に人間の側なのだろうか。