あらすじ
「――君との婚約は破棄する。この“呪われた鐘楼令嬢”とは、もう二度と顔も見たくない!」
王太子カイルのその言葉と同時に、世界の時が止まった。人も、風も、宙に舞うワインの雫すらも凍りつく。動けるのは、私――アリエル・ヴェルンただ一人。
前世は現代日本の時計職人。歯車と時間を愛し、一秒の狂いも許さなかった私は、なぜか辺境伯令嬢に転生していた。生家は三百年前に水没し“時が止まった”と噂される『沈鐘の鐘楼』を管理する家。そのせいで社交界では「不吉」「呪われた令嬢」と嫌われ続け、ついには公衆の面前で婚約破棄――のはずが。
止まった世界で唯一動ける力、それは呪いではなく、鐘楼管理者だけが受け継ぐ『時読みのギフト』。無防備に凍りついた継妹と元婚約者の懐から、私は家督を奪う偽造契約書と、宰相派の陰謀の証拠を次々と暴いていく。
「我慢するのは、今日で終わり。三百年止まっていた鐘、私が鳴らします」
水底に沈んだ鐘楼で、私は動くはずのない“誰か”と出会う。止まった時と、止まった心。時計職人の指が、再び時を刻み始めるとき――そして、三百年前に鐘楼を沈めた真犯人の影が、静かに動き出す。
止まった時の中で紡ぐ、痛快転生ざまぁ&時をめぐるミステリー・ロマンス。