あらすじ

わたくしは三度、灯を看取ってまいりました。家がしまわれるとき、最後の一本を切って火を落とす役でございます。 四度目に呼ばれたのは、三年前から灯りがひとつも点いていないお家でした。蝋は上物が納められております。燭台も鋏も揃っております。それでも誰も火を点けない。 芯の焦げ方を見れば、その家でいつ火が落ちたかは分かります。三年前の冬でございますね、とだけ申し上げて、わたくしはその晩から毎晩、燭台をひとつだけ選んで芯を切り、戻して帰ることにいたしました。 点けはいたしません。点けるのは、お家の方の仕事だからでございます。 切って置いていく夜が続くほど、こちらの中では問いが濃くなってまいります。わたくしは終わらせる係でしかないのではないか。それは申しません。ただ毎晩、一本切って戻すだけでございます。 ある晩、帰ったあとに一本だけ灯が点いておりました。誰が点けたのかは分かりません。翌晩は二本。半月で座敷の燭台が全部点きました。 誰も裁かれず、誰も落ちません。三年ぶりに家中の灯が点いた夜、当主様がおっしゃいます。「いてほしい」。 わたくしは初めて、帰り支度をしないまま座敷に座りました。

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小説を読もう2026/08/14
  • 現在の作品三年灯りの消えた家で毎晩ひとつ芯を切り「いてほしい」と言われました