あらすじ
路地裏で目を覚ました少年には、自分の名前以外の記憶がなかった。
「透……」
意識が遠のく中、誰かにそう呼ばれた気がする。
けれど、その声が誰のものなのか、自分がなぜそこにいたのかさえ分からない。
そんな透を見つけたのは、一人の女性警察官――想ノ瀬 麗(おもいのせ うるは)だった。
「名前は?」
「……多分、透です。苗字はわかりません」
身元を示すものは何もない。
家も、家族も、過去もない。
身元不明の少年として保護された透は、麗と関わる中で少しずつ日常を取り戻していく。
そして、麗から新たな名字を与えられる。
―― 想ノ瀬 透(おもいのせ とおる)。
それは、透にとって初めて与えられた「居場所」だった。
しかし、透にはまだ知らない秘密がある。
なぜ、自分は記憶を失っているのか。
あのとき自分を呼んだ声は誰なのか。
そして――なぜ、自分には「記憶を代償にして力を使う」異能があるのか。
力を使うたび、何かを失っていく。
強くなればなるほど、自分自身から遠ざかっていく。
これは、失った記憶を探す少年と、彼に居場所を与えた女性の物語。
――その力で最後に失うのは、いったい何なのか。