あらすじ

「次の月から、薬草番は書生に替えます」——館の主治医がそう告げたとき、わたしは指先で香草を折っていました。ぱきり、と細い音がしました。 薬は処方では決まりません。乾き加減で効きが変わります。日照りの年の草は油が強いので乾かしを三月延ばす。川縁の株は水を含むので刻んでから干す。朝露のうちに摘んだ草は色が残るので熱冷ましへ回す。柱に貼れるのは日数と目方だけで、その日の読みは全部この頭の中にございます。 札は要らないと言われました。ええ。草は、摘めば手に入ります。 匙はお返しします。棚も鍵も置いてまいります。怒鳴り込みもいたしません。ただ、野の三軒へ次の摘み時だけを書き置いて、館を出ます。 半年、何も起きませんでした。二年乾かした草がある間は、熱は下がります。けれど秋、その束が尽きた朝から、同じ処方の同じ目方で、子どもの熱が朝まで下がらなくなりました。誰も怒鳴りません。次の月から、往診の呼びが来ないだけです。 自分の名を掛けた乾かし棚の前へ立った主治医へ、あの一句をそのままお返しするお話。

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小説を読もう2026/08/14
  • 現在の作品薬草番を追放されました。秋の熱冷ましは、ご自分の匙で