あらすじ
百年の昔、そう、おおよそ百年。この世界はなんでもおおよそだ。
歴史から、こまかな記録、文学、芸術、世界の何もかも、あの大戦で焼き尽くされた。
いまはクレトリア暦八九九年。これもおおよそだ。
天より飛来した魔神たちとの人類存亡をかけた終魔大戦で、人類は辛くも生き延びたが、多くのものを失った。
人類はあらゆる街を焼き尽くされ、拠点を失い、人が人として生きる糧を得るにも苦しむありさまだった。
その時、聖なる乙女が現れた。女神アーシャーリアの力を顕現する乙女たちは、奇跡を自らの番いとなる戦士たちに与えた。
聖なる石、珠石を埋め込んだ戦士たちは、聖なる乙女の祈りがある限り、不死であり、魔神を凌駕する力を振るった。
そうして魔神を打ち払った人類は、復興の時代へと移り変わる。
芸術、文学、様々なものを失った人類の娯楽の一つに、聖女の力を借りた戦士たちの剣闘があった。
戦士たちは、聖女の加護のもと戦いを興じた。
いまは、そんな時代だ。
娯楽と言えば、剣闘がわかりやすい。血沸き肉躍る。
聖女の加護を使った安全な闘争。
なんて罰当たりな。
加護を与えてくれる聖女のいない剣闘士シグルドは、いつも危ない橋を渡って試合をしていた。
「あなたの聖女になりたいのです!」
いや、そんな浮ついた気持ちは俺はないけどね。
さておき、規則改正で試合に出られない憂き目にあった俺。
そこへふらりと訪れた新米聖女に、俺の残り半分の人生が動かされはじめた。