あらすじ

題名を少し変えました 長崎・諫早の堤防の先、潮が引くたび泥がむき出しになる干潟で、一本の“歩いた線”みたいな足跡を見つけた。普通なら満ち潮に撫で消されるはずなのに、それだけが昨日のまま残っている。しかも途中から、歩幅も角度も揃いすぎていて、人間が歩いた感じが薄れていく――まるで「ここを通れ」と誰かが規則で引いた道みたいに。 興味本位でスマホを向けた瞬間、画面の端にだけ白い手が映った。現実には何もいないのに、映像の中では“それ”が干潟を撫でて引っ込む。帰宅した夜、知らない番号から届く通知は短い一言だけ――「かえして」。タップすると履歴は空で、証拠ごと世界から消えたみたいに跡形もない。 翌日から、もっとおかしくなる。クラスメイトが友だちの名前を言い間違え、やがて“下の名前って何だっけ”と当たり前のことを当たり前に忘れはじめる。欠席した友だちの家を訪ねても「そんな子はいない」と言われ、卒アルからも綺麗に抜け落ちている。唯一残るのは、動画の中にだけ映る“いたはずの人”と、等間隔に増えていく足跡の列。そして気づく――干潟が奪うのは存在そのものじゃない。まず名前を削り、記録を削り、最後に「最初からいなかった現実」へと修正していくのだ。次に消えるのは、友だちではなく、自分かもしれない。

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カクヨム
カクヨム2026/08/14
  • 現在の作品▩▩▩▩▩と呼ばないで