あらすじ
悪役継母は、五年後に断罪される。
そう決まっていると気づいたのは、継娘の頬を打とうと手を振り上げた瞬間だった。
手が、途中で止まった。
戻ってきたのは前世の記憶だ。
人事部で十年、人を評価し、切る書類を扱ってきた。
決めるのはいつも上で、実行して名前が残るのは自分だった。
この家でも同じだ。
継娘を追い落とす筋書きを描いたのは叔父で、わたくしはただの実行役。
ならば話は早い。
ユリアーナは十二歳の継娘に、取引を持ちかける。
返ってきたのは三つの条件だった。
守らないこと、嘘をつかないこと、途中でやめないこと。
虐げる側と、虐げられる側。
そのふたりが共犯になる。
朝の献立表の人数が、二に書き換えられる。
隅の部屋から屋敷を数え続けていた子どもが、数字を差し出してくる。
三年会っていない夫からは、便りが一度もない。
そういう人なのだと、ずっと納得していた。
封の切られていない手紙の束を見つけるまでは。
あの子が数えていたのは、屋敷の出入りだけではなかった。