あらすじ
あらすじ
飢饉に喘ぐおとぎ国。ここでは、絵本の中で「めでたし、めでたし」と語られてきた物語の裏側を、現実の刑事裁判として裁き直す制度が存在する。
第一章「お菓子の家殺人未遂事件」では、実の親に二度も森へ捨てられ、極限の人間不信に陥った兄妹ヘンゼルとグレーテルが、彼らを保護しようとした魔女ホレ氏を襲った罪に問われる。檻、巨大な竈、光る石――積み重なる物証と証言は、事件を「善意と恐怖のすれ違い」として一つずつ解き明かしていく。だが真に裁かれるべきは、子供たちを追い詰めた大人たちではないのか。
第二章「さるかに合戦」では、母を奪われた小蟹三兄妹が、その報復として猿を襲った事件が裁かれる。栗、蜂、牛の糞、そして首謀者・臼――同じ現場にいた七人の被告人は、それぞれ全く異なる覚悟と強制の度合いのもとにその場に立っていた。トドメを刺した長男、手を下せなかった次男、姿さえ見せなかった長女。「同じ現場にいた者たちの罪は、等しいのか」――新たな問いが、法廷の天秤を揺らす。
中立を貫く裁判官、国家秩序を絶対視する検察官カスパー・ライン、かつて自らも「悪役」のレッテルを貼られた過去を持つ弁護人エミール・ローゼンタール。そして、事件の裏にある「本当に裁かれるべき者」を追う記者アルベルト・クライン。
誰も完全な悪人になれず、誰も無条件には赦されない。おとぎ話が隠してきた"もう一つの真実"を、司法の手続きで裁くたび、天秤はまた新しく揺れ動く。