あらすじ
「模範的な患者」の完璧な笑顔の裏に、底なしの狂気が潜んでいた。
外来処置センターに勤める生真面目な看護師・如月環(きさらぎ たまき)。 常連患者の氷見野蒼(ひみの あおい)は、丁寧な物腰と誠実な態度で周囲から愛されていたが、環の日常を静かに、確実に侵食していく。
届くはずのない私物、過剰な観察、そして過去のトラウマを突いた脅迫――。 警察に駆け込むも「実害がない」とあしらわれ、看護の倫理(応召規定)という制度の壁が、環から逃げ場を奪い去る。
大雪の夜、停電した病院で正気を打ち砕かれたその瞬間、環の意識は【過去】へと巻き戻っていた。
「あの夜を避ければ、助かるはず――」 先回りして惨劇を防ごうと足掻く環。だが、彼女を待っていたのは惨酷な「前進型ループ」の罠だった。
未来を書き換えるたび、過去の記録から消えていく元同僚の存在。 環の不自然な先回り行動すら、「最高におもしろいおもちゃ」として笑いながら泳がせる蒼。 そして、周囲を完璧に管理しようとするあまり、自らも蒼と同じ冷酷な「怪物」へと変質していく存在論的恐怖。
逃げ場のない「公開密室」の中で、環が辿り着いたたった一つの脱出路。 それは、勝利でも打倒でもなく――自らのすべてを投げ打つ「自白(敗走)」だった。
――「あなたの指示書は、最初から届いていなかったのよ」
狂気のサイコパス×追い詰められた看護師。 毒と執着の連鎖を断ち切る、静かで鋭烈な医療サイコスリラー!