あらすじ
料理口の向こうをいづはが通るたび、蓮は無意識に顔を上げてしまう。
客に向ける笑顔
忙しい店内を迷いなく歩く姿
厨房へ料理を催促するときの、少しだけ厳しい声。
割烹居酒屋「水月」で働き始めた十九歳の蓮は、ホールの先輩である大学生・いづはに一目惚れした。
けれど、すぐに仲良くなれるわけではない。
彼女は店の先輩
自分は料理の腕だけを持った、勤務経験のない新人。
彼女を「いづさん」と呼び、仕事上の言葉を交わし、疲れていることに気づいても、できるのは小さく手助けすることだけだった。
そんな中、店の料理長が突然失踪する。
二十歳になったばかりの蓮は、いづはや仲間たちに支えられながら、料理長として店を守ることになる。
厨房から客席を見る蓮と、客席から厨房を見るいづは
二人は同じ店を支えながら、少しずつ互いの弱さを知っていく。
そして、一年で最も忙しい十二月を乗り越えた納会の夜。
酔っていづはの膝にもたれた蓮は、初めて「さん」を外して彼女の名を呼ぶ。
「……いづは」
それまで蓮だけが彼女を見ていた恋は、その夜から、互いを見つめる恋へと変わり始める。