あらすじ
十六歳の少女リゼには、ずっと決めていたことがある。
冒険者になって故郷を出て、自分の知らない世界を見て回ること。
王都も、大砂海も、海も、北方も、魔族の国も。旅人の話でしか知らない場所を、いつか全部この目で見たい――そのはずだった。
冒険者になる前日、リゼは森で偶然、古い遺跡を発見する。
地下で見つけたのは、黒く、生き物のように脈打つ謎の物体。それに触れたことで、リゼの身体には三百年前に死んだはずの魔王ゼルヴァンが宿ってしまう。
しかも、日が沈むと身体を動かすのはゼルヴァン。
昼は駆け出し冒険者のリゼ。夜は、同じ少女の姿のまま三百年前の魔王。
戦い方すら知らないリゼに対し、ゼルヴァンは戦闘技術も魔法知識も超一流。ただし使える身体も魔力もリゼのものなので、生前のような力任せの無双はできない。
『小娘、そこは避けろ』
「小娘じゃなくてリゼ!」
最初は互いに迷惑でしかなかった二人だが、リゼはゼルヴァンから戦う術を学び、ゼルヴァンは三百年後の世界をリゼから知っていく。
そして旅の途中、歴史では勇者に討たれたはずのゼルヴァン自身が、奇妙なことに気づく。
――自分は、本当に勇者に殺されたのか?
世界を見たい少女と、自分が死んだ真相を知りたい魔王。
一つの身体を昼と夜で使いながら、二人の少し変わった旅が始まる。