あらすじ
ニューヨーク生まれを密かな自慢にする大学生の「僕」は、ソルボンヌ大学の二週間の夏期語学講習に参加するため、初めて一人でパリに滞在する。だが記録的な熱波と、冷房のない屋根裏部屋の暑さに次第に心身を蝕まれ、授業にもついていけなくなる。それでも母には「大丈夫」と強がる夜、壁の向こうから日本語で「暑いね」と声が返ってくる。顔も名前も知らない相手にだけ弱音を吐けるようになるが、ついに脱水で動けなくなる。声は「行け!」と怒鳴り、彼を部屋の外へ追い出す。階段で倒れた彼は発見され、一命を取り留める。声は幻聴だったのか、誰かが本当にいたのか。帰国前夜、彼が壁に「暑かったね」と語りかけると、同じ言葉が静かに返ってきた。