あらすじ
人と話すことが苦手なヒルデは、父から受け継いだ店を潰してしまった。
誰にも相談できないまま、土地も店も失い、逃げるように身を寄せたのは町外れの修道院。
そこでも人付き合いが苦手な彼女は、納屋掃除や家畜の世話を任される。
けれど、ヒルデには一つだけ、人より少し得意なことがあった。
――人の話を聞くこと。
懺悔室で黙って人々の話を聞き、写本を続けるうち、司祭から子供向けの聖典を書いてほしいと頼まれる。
そこで彼女が書いたのは、歌えない鳥、売れないパン屋、失敗ばかりの魔法使い。
どれも、特別ではない者たちの物語だった。
そしていつしか、彼女の物語は人々の心を救い始める。
人と話せなかった女性が見つけた、自分だけの「誰かを救う方法」。
これは、そんな彼女が「無口な聖女」と呼ばれるまでの小さな物語。