あらすじ
人里から遠く離れた山には、昔から一つの嫌な習わしがあった。
生まれが不吉だから。
魔力を持たないから。
一族とは違う姿で生まれたから。
役に立たないと決めつけられたから。
そんな理由で居場所を失った子供たちが、捨てられる山。
ある日、そこで暮らす男は七人の幼い子供を見つけた。
人間、竜人、獣人、エルフ、魔族、吸血鬼、鬼人。
種族も、生まれも、捨てられた理由も違う七人。
男は少し考えてから、全員を家へ連れて帰った。
腹が減ったら飯を食え。
悪いことをしたら謝れ。
姉妹で喧嘩したなら話し合え。
困っている奴がいたら、できる範囲で助けろ。
どうしても殴られるなら、自分の身くらい守れ。
男が教えたのは、その程度のことだった。
山には学校もなければ、貴族も、神殿も、冒険者ギルドもない。
七人にとって世界の常識とは、父親が教えてくれたことと、姉妹八人で暮らした日々の中にあるものだけだった。
やがて少女たちは成長し、一人、また一人と山を下りていく。
父親は知らなかった。
自分が普通だと思って育てた娘たちが、外の世界では一人残らず規格外だったことを。
そして娘たちも知らなかった。
「家では普通だった」が、下界ではまったく普通ではないことを。
「父さんが、困っている人は助けろって言ってた」
そう言って一国を救い、
「話し合っても駄目なら身を守っていいって」
そう言って軍勢を叩き伏せる。
やがて世界中で囁かれ始める。
竜皇も。
獣王も。
魔王も。
鬼神も。
なぜ揃って同じ人物を、
――父さん。
と呼ぶのか、と。
その頃、当の父親はそんな騒ぎなど何も知らず、静かになった山で――また一人、新しい捨て子を見つけていた。
右には天使の白い翼。
左には悪魔の黒い翼。
これは、世界から捨てられた子供たちと、そんな彼女たちをただ娘として育てた父親の物語。