あらすじ

三歳の千尋は、まだ文字も読めないのに「えほんつくるの」と胸を張る子だった。 クレヨンで描く丸い風船、オレンジ色の空、雲の上の家——その世界は幼い想像力とは思えないほど自由で、鮮やかだった。 母の千晶は二十七歳。 シングルマザーとして働きながら、娘の描く“空のまち”を誰よりも信じていた。 ある夜、千尋が描いた「赤い風船の子」の絵を見て、千晶は決意する。 ——この子の世界を、誰かに見てもらいたい。 千晶は中小出版社「青灯舎」の扉を叩き、編集長・永田に千尋の絵と物語の“本筋”を見せる。 永田は三歳の作品に半信半疑だったが、画面に映る色と線を見た瞬間、表情が変わった。 「これは……絵本ではなく“世界”だ」 千尋の描く空のまちには、まだ誰も知らない秘密がある。 赤い風船の子はどこへ向かうのか。 空色の猫は何を見ているのか。 夕焼けの橋の向こうには何があるのか。 永田は言った。 「長編にしましょう。この子の世界は、一冊で終わらせるには惜しい」 千晶は涙をこらえながら頷いた。 こうして、三歳の少女と母、そして一人の編集者による“空のまち”の物語が静かに動き始める。

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カクヨム
カクヨム2026/08/13
  • 現在の作品空のまちへ行く子