あらすじ

「うちの反物の目が粗い。糸を抜いたのはこの者だ」——夏の初め、反物の座で、買い手が居並ぶ前で主人がわたしを名指しした。 否定はしない。代わりに、三つ並べた。抜いたのでございますか。わたしがやるなら、そんな下手はいたしません。筬を一羽落とします。耳の返しを二本にします。湿りの日に張りを半分緩めます。どれも数えれば糸は合っております。目の詰みだけが落ちます。 座が、しんと静まった。最後に一人が言う。「……そりゃ、あんたにしかできん」。 反物の値は糸の本数ではなく、指で撫でたときの目の詰みで決まる。十一年、それを守ってきた。手間賃は入って半年の甥と同額に割り直され、柱には羽数と本数が貼り出された。承知しました。糸が通っていれば売れます。 道具を拭いて棚へ戻し、いつもの位置へ揃えて店を出た。壊しも持ち出しもしない。やめるのは、手を入れることだけ。 秋。糸数は合っているのに、撫でると指が滑る反物が出た。呉服屋が端を撫でて首を振り、巻きがそのまま返る。誰も怒鳴らない。ただ次の月から、注文が来ない。自分の機を持ったわたしの前へ「戻ってくれ」と立った主人へ、あの一句をそのまま返す話。

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小説を読もう2026/08/13
  • 現在の作品濡れ衣で名指しされ、粗い目抜きはしないと申しました。秋にお宅の反物は滑ります