あらすじ
父は八十八歳。認知症が進み、終末期にいた。
僕は四十四歳。
父がいまの僕と同じ歳だったのは、四十四年前――1982年。僕が生まれた年だった。
父の荷物を整理していた僕は、一本の古いVHSを見つける。
ラベルには父の字で『ダーティハリー』。
そして、その下には見知らぬ筆跡で、
「ここから先は見るな」
再生すると、一分二十三秒から四十七秒間だけ続く奇妙な砂嵐。友人と解析したその中から現れたのは、存在するはずのない2026年の映像だった。
やがて僕は1982年へ落ちる。
そこで出会ったのは、四十四歳の父だった。
父は僕を息子とは知らない。
僕も正体を明かさない。
同い年の友人として酒を飲み、笑い、やがて父が家族を捨てようとしていることを知る。
そして僕は気づいていく。
過去へ来たことで未来が変わるのではない。
僕が過去へ来たからこそ、娘のいる現在があるのかもしれない。
一本のVHSと、四十四年の時間をめぐる、父と息子のSF小説。