あらすじ
元日の朝、二十三歳の凜は、実家の本棚を整理していた。
ふと手に取った漫画『ドメスティックな彼女』に登場する葛岡寧々という女性に、凜は強く惹かれる。
相手の歪んだ考えを遠慮なく見抜き、真正面から指摘しながらも、決して相手そのものを否定しない。
そんな「葛岡のような女」が、自分のそばにもいてくれればいいのに――。
そのとき、階下から玄関のチャイムが鳴る。
降りてみると、そこには見知らぬ男がいた。男の名は松本。母親が付き合っている男性だという。
家庭外で母がどんな人生を送ってきたのかを知らずに生きてきた凜は、突然、自分の知らない「女としての母」を見せつけられる。
強烈な嫌悪と動揺に襲われた凜は、大学時代のある女性を思い出す。
大学二年の春、人間関係に疲れ果て、誰も自分を嫌ってなどいないのに、周囲の人間すべてを信じられなくなった凜。
そのとき、彼の異変に気づいて隣に座り、話を聞き、最後には涙を流してくれた女性がいた。
その後、二人は親しくなった。
しかし、彼女には恋人ができ、やがて凜は彼女から複雑な恋愛事情について相談されるようになる。
恋愛経験のほとんどない自分が、なぜ彼女の相談相手なのか。
彼女の言葉に期待し、傷つき、そして自分自身の潔癖で偏屈な恋愛観と向き合う中で、凜は彼女こそが、自分にとっての「葛岡」のような存在なのではないかと考えるようになる。
しかし、彼女は凜の歪みを完全に消してくれるわけではなかった。
彼は、自分の歪みを正してくれる誰かを求めながら、同時に、その歪みを自ら手放すこともできない。
「葛岡のような女が、自分の近くにいればいいのに」