あらすじ
私は水中洞窟を専門に潜るケイブダイバーだ。
ダイビングのライセンスである『Cカード』を取得するため、指導団体の講習で、アメリカ人インストラクターのハロルド・J・ウィルソンに師事。
やがて私たちは、生徒と教官のみならず、年齢差の垣根をも越え恋人同士になる。
私とハロルドはバディを組み、各地の水中洞窟に潜るようになった。
8年前、私たちはメキシコ・ユカタン半島にある【ノートルダムの竪穴】に挑むも、未踏の迷宮を前に敗退。
雪辱を誓ったハロルドは、その7年後に単身リベンジし、消息を絶ってしまった。
結局、警察・ダイバーたちの捜索も虚しく、遺体は見つからなかった。
あれほど一心同体だった恋人を失った私は、まるで魂の片割れを捥ぎ取られたかのよう。ずっと沈んだままだった。
『絶対に追うな』。
彼が残したメモに背き、私は同洞窟に潜ることを決意。
目的はただひとつ、ハロルドの亡骸を回収すること。
いざ【ノートルダムの竪穴】の奥深くへ進むも、幾多の難所に悩まされる。
どうにかたどり着いた奥の大ホールで、私はついにアレを目撃してしまう――ハロルドは生前、【Floaters】には気をつけろと言っていた。
私は三重県の志摩沿岸で海女の世界で伝わる海の怪異、トモカヅキを思い出さずにはいられない。
大ホールに浮かぶ、見憶えのあるダイバーは意思を持ったように近づいてき、私に語りかけてくる。
本当にハロルドの遺体なのか、それとも私そっくりのドッペルゲンガーか?
浮上できるかどうかは、もはやエアの残量だけの問題ではない……。
※本作は武 頼庵さま主催『みずに纏わる物語企画』参加作品です。
※15,000文字超。全6話の連載予定です。