あらすじ
「セラフィナ! お前との婚約を破棄する!」
建国祭の夜、王太子ジェラルドの高らかな声が大広間に響いた。継妹ミレーヌの偽りの涙、貴族たちのどよめき——けれど公爵令嬢セラフィナは、ただ静かに微笑んで一礼した。
「では、明日の朝を楽しみに」
前世は過労死した建築設計士。この世界の理不尽など、納期短縮の絶望に比べれば些細なもの。だが誰も知らなかった。この壮麗な白亜の王城が、実は『砂』で出来ていることを。そして七歳から十二年間、たった一人で毎晩『固定の祈り』を捧げ、この国を崩壊から支え続けてきたのが——『冷たい女』と嗤われた彼女だったことを。
「今夜限りで、祈りをやめます」
感謝も労いも、ただの一度もなかった。もう縛られる必要はない。荷物をまとめ城門をくぐった彼女を待っていたのは、『氷血の竜将』と恐れられる隣国の竜人将軍ヴァルド。戦場で情け無用と恐れられる男が、なぜか三年間、毎晩ある物を届け続けていて——。
断罪の朝、砂に還る城。そして祖母の形見の砂時計が、逆さまに流れ出したとき、彼女の新たな物語が始まる。
感情を殺し続けた転生設計士の、痛快な一夜逆転劇。噛み噛みで不器用な竜将軍との、あたたかな再出発をお届けします。