あらすじ

「次の代からは、節はよそから買う」——梅雨の入り、蔵で節を数えているわたしの背中側で、跡取りが仲買にそう話していた。わたしには何も告げられていない。 節は、干せばすぐ枯れるわけではない。カビを付け、払い、天日に干し、また付ける。二年かけて枯節になる。腹側の厚い節はカビを一番で止める。梅雨に入った年の節は天日を半日短く。脂の強い節は払いを四番まで。柱に貼れるのは日数と番手だけで、見立ては全部この頭の中にある。 札は要らないと言われた。柱には手順が貼り出された。承知しました。節は干せば枯れます。では今日から、蔵へは入れません。 刃を拭いて棚へ戻し、いつもの位置へ揃えて店を出た。壊しも持ち出しもしない。やめるのは、明日のための節を上げることだけ。 半年、何も起きなかった。削り節は出る。跡取りは、ほら変わらん、と言う。 夏。二年物が尽きた朝から、湯へ落としても香りが立たない。煮売り屋が試しに引いて首を振り、袋がそのまま返る。誰も怒鳴らない。ただ次の月から、注文が来ない。自分の蔵を持ったわたしの前へ「戻ってくれ」と立った跡取りへ、あの一句をそのまま返す話。

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小説を読もう2026/08/13
  • 現在の作品見限りと言われ、十二年の枯らし節を上げません。夏にお宅の出汁が香りません