あらすじ
人は、知らない時代に浪漫を見る。
行ったことのない街に郷愁を覚え、存在しない土地に故郷を見る。
烏丸慧《からすま けい》もまた、かつて一度だけ、現実の向こう側にあるような場所を見た。
桃花源とでも呼ぶべき、地図にはなく、二度と辿り着くことも出来ない土地だった。
その話に目を輝かせたのが、探偵事務所を営む竜胆喜助《りんどう きすけ》である。
「世の中には、まだ知らん場所があるらしい」
そうして始まった二人の調査は、やがて人々の記憶や記録にだけ残された奇妙な場所へと向かってゆく。
百年前の上海を思わせる街。
誰も帰ろうとしない山村。
古い写真の中にだけ存在するホテル。
いつまでも終着しない列車。
美しいものには汚れがあり、楽園には生活があり、幻想にもまた現実がある。
それでも人は、そこに夢を見る。
これは、現実の隙間に取り残された浪漫を追う、二人の男の調査記録である。