あらすじ
「……神崎くんのことが好きです。私と、付き合ってください」
放課後の校舎裏で、いきなりそう言われた。
目の前に立っている女子生徒が誰なのか、僕には分からなかった。
目も、鼻も、口も、黒く塗り潰されて見える。僕にとって、人の顔はずっとそういうものだ。
中原雫。
人気の若手女優だと知ったのは、振ってしまった次の日だった。
学校中が彼女の顔を知っていて、僕だけが知らない。
それなのに彼女は、仕事のない日に美術室へ来るようになった。
顔が分からないから、僕は彼女を数えるしかなかった。
声の高さ。右の踵が強く鳴ること。柑橘に似た香水。笑うとき、声より先に息が漏れること。
美術部で、僕は人のいない絵ばかり描いてきた。
その僕が、彼女を描きたいと思ってしまった。
※完結済みです。改稿版を投稿していきます。
別で投稿している『シンデレラは酒を飲まない』と世界観を共有しています。本作品のみでもお読みいただけます。