あらすじ
三年のあいだ、旦那様はわたくしに一度も話しかけませんでした。
同盟の担保としての白い結婚が明け、わたくしは祖母の遺した辺境の駅を継ぎました。街道の継立所――王都からの定期便が、週に一度だけ馬を替えに寄る場所でございます。
帳面は読めます。三年、誰にも読まれない家政帳をつけ続けておりましたので。
はじめての便が着いたとき、御者台から降りていらしたのは、あの方でした。駅逓監督官を、自ら志願なさったのだそうです。
「馬をお替えいたします。半刻ほど、お待ちくださいませ」
その半刻で交わした言葉が、三年ぶんより多うございました。
――次の便は、七日後でございます。
静かなじれじれと、遅れて届く言葉が好きな方へ。ざまぁはございません。旦那様が信用を一から積み直すお話です。第1部(全30話)まで書き上げております。