あらすじ
魔王城まで徒歩十五分。
住民の平均レベルは八十超え。
伝説級の武器が店頭に並び、道端の魔物ですら歴戦の冒険者を殺しかねない。
そんな世界最強クラスの都市――《終焉都市ヴァルハラ》。
ある日、その市長のもとに《はじまりの街リスタ》から一通の手紙が届いた。
そこには善意でこう書かれていた。
「ヴァルハラという名前は初心者には少し怖いので、“わくわく冒険タウン”などはいかがでしょうか」
市長、激怒。
「戦争だ!!」
こうしてヴァルハラは、住民の最高レベルが一桁しかない《はじまりの街》へ五千の精鋭軍を送り込んだ。
総司令バルガス、レベル93。
異名は《竜殺し》。
どう考えても負けるはずがなかった。
――町へ入るまでは。
『はじまりの街へようこそ!』
『まず前へ三歩進んでください』
「俺は侵略しに来たんだぞ!?」
敵兵であろうが、初めて来た者には初心者案内。
世界最高峰の大剣を持っていても、渡されるのは木の棒。
レベル93だろうが、最初に戦うのはスライム。
しかも安い薬草を買い占めれば自国の市場が崩壊し、最強装備を持ち込めば初心者向けの土地では思わぬ問題が起こる。
さらに戦争を続けるうちに――
回復役がいないので出撃できない。
死んだ場所まで財布を取りに戻る。
洞窟へ入るたび道が変わる。
敵地なのに宿屋の口コミ評価を気にする。
強敵を倒すより素材集めに時間がかかる。
敵将を弱らせたら、なぜか少年が捕まえようとしてくる。
宝箱を見れば警戒し、赤い樽を見れば壊したくなり、世界滅亡の危機なのに釣りへ行く奴まで現れる。
この世界では、冒険者たちが当たり前だと思っている不可思議な法則が、なぜか本当に存在する。
もっとも――
彼ら自身は、それがおかしいとは思っていない。
「なぜ戦争するだけで、こんなに面倒なんだ!!」
ゲームなんて知らない常識人、《竜殺し》バルガス。
「そういう決まりですので」
はじまりの街の案内係、ミナ。
そして毎回ろくでもない作戦を思いつくヴァルハラ市長ガルド。
最強の街と最弱の街。
冒険の「終わり」と「始まり」がぶつかったことで始まった戦争は、やがてRPGだけでは済まない、とんでもない方向へ転がっていく。
これは――
魔王より恐ろしいラスボスへ挑む物語ではない。
ゲームのお約束を一切知らない人々が、ゲームのお約束に本気で振り回される物語である。