あらすじ
物語には、響きがある。
人々に語り継がれた伝説。
誰かの大切な思い出。
終わったはずの出来事。
それらは世界に残り、ときに現実を歪ませる。
そんな「物語の響き」を整える職業――調律師。
見習い調律師のアルトは、師匠ノアのもとで依頼をこなしていた。
けれど彼には、他の調律師とは少し違うところがあった。
危険な響きを消すための鈴を、どうしても鳴らせない。
消すのではなく、続ける。
それがアルトの選ぶ調律だった。
同期の少女ミナと出会い、様々な依頼を経験する中で、アルトは少しずつ自分の力の異常さに気づいていく。
そしてある日、転職神殿で告げられた。
「あなたの記録は、六か月前からしか存在していません」
生まれてから今まで。
自分が生きてきたはずの人生が、どこにも記録されていない。
やがて明らかになる、アルトの記憶封印。
「転生者」という可能性。
そして、終わった物語が沈んでいくという異空間――名残層。
物語を終わらせることこそ救いだと信じる元調律師カイン。
物語を動かす力を持つ少女、勇者リゼ。
世界の秘密を知る大調律師シリウス。
それぞれの「物語」が交差するとき、アルトは選択を迫られる。
終わらせるのか。
それとも、続けるのか。
これは、世界に残された物語を調律する少年が、
自分自身の失われた物語を探していく物語。
――物語は、終わらせることだけが救いではない。