あらすじ

魔力測定値は、十一年連続でゼロ。 リリアーナの身体には、魔力が一滴も溜まらない。 この国では、それは最底辺の欠陥だった。 婚約破棄を告げられた夜、彼女は前世を思い出す。 働きすぎて倒れた、品質管理課の記憶だった。 慰謝料も名誉も要らない、と彼女は言う。 向かった先は、祖父が遺した辺境の杖工房。 そこで彼女は、自分の体質の意味を知る。 魔力が溜まらない身体は、魔力を素通りさせる。 だから杖に触れるだけで、内部の詰まりが読める。 術者は誰も、自分の杖の中を見られない。 彼女だけが、それを手のひらで測れた。 工房は一日五件で閉まる。 日没を過ぎたら、金貨百枚の依頼でも受けない。 無理をして作った物は必ず歪む、というのが彼女の理屈だった。 やがて王都で、原因不明の魔法事故が続きはじめる。 理由を言い当てられる人間は、この国にひとりしかいない。 そして彼女は、その人間だった。 工房に通う無愛想な辺境伯が、ひとつだけ譲らないものがある。 腰に提げた、ひどく歪んだ古い杖。 握りが小さすぎて、彼の手にはまるで合っていない。 なぜ彼は、それを手放さないのか。 その削り跡に、彼女はなぜ見覚えがあるのか。

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小説を読もう2026/08/13
  • 現在の作品婚約破棄されたので、聖杖職人に戻ることにした