あらすじ

生まれて初めて列車に乗った「私」は、行く宛もないまま、木造の客車から流れゆく田園と黄昏を眺めていた。 煙管を回し、『徒然草』を読み、ただ気の向くままに車窓を楽しむ。それだけの旅になるはずだった。 しかし、いつまで経っても駅の人は来ない。見慣れぬ洋服の男たちが次々と乗り込み、痩せ細った女子供が広島や長崎について怯えながら語り始める。そして、片田舎だと思って降りた駅には、見たこともない文明が広がっていた。 「しんこう」「しょこう」「そうてい」「ごかん」――。 奇妙な名前の駅を通り過ぎながら、それでも「私」は深く考えない。河原の人影に手を振り、猫を撫で、夜更けの火を野焼きだと笑い、徒然なるままに列車へ揺られ続ける。 やがて列車は、終点「泰山」へと辿り着く。 私は一体、いつからこの列車に乗っていたのだろう。

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カクヨム
カクヨム2026/08/13
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