あらすじ
都心から少し外れた雑居ビルの三階。
看板は小さく、室内は薄暗い。古びた木製の机、壁に貼られた古い地図、ほとんど枯れた観葉植物、そしていつもの安い缶コーヒー。
ここが、黒崎玲の探偵事務所だ。玲は三十二歳。口が悪く、容赦がない。
表の探偵や警察では扱えない依頼だけを引き受ける、裏稼業の専門家である。
依頼人は主婦、ヤクザ、外国人、子供、時には人ならざる者まで様々。
失踪、呪い、機密、怨み、奇妙な約束——案件の内容も、ジャンルも、来るたびにまったく違う。玲は毒舌で依頼人を突き放しながらも、淡々と調査を進める。
論理を積み重ね、時に「ちょっと怪しいもの」の存在を認めつつ、事件を一つずつ片付けていく。
解決した後に残るのは、約束通りの報酬と、机の引き出しにしまわれる小さな後始末だけだ。各話は基本的に完結する。
しかし、前の依頼の余波が次の案件にわずかに影を落とすこともある。
事務所の空気と、玲の変わらない口調だけが、静かにシリーズを通して続いていく。今日も玲は缶コーヒーを飲みながら、面倒くさい依頼を待っている。
次に来るのが、どんな人間で、どんな「裏」の話なのかは、誰にもわからない。