あらすじ
帝国には、処刑された罪人の最期の姿を描き、国家記録として残す「刑死肖像官」がいる。
十九歳の新人肖像官リゼ・アルノーは、人の顔を一度見れば忘れないという異能じみた観察力を持ちながら、幼いころ処刑された父の顔だけを思い出せずにいた。
ある日、リゼは皇帝暗殺未遂で処刑された青年カイルの肖像を任される。
首を刎ねられた彼を描き終えた翌朝。
完成した肖像画から、カイルの姿だけが消えていた。
そしてリゼの部屋には――昨日死んだはずのカイル本人がいる。
しかも奇妙なことに、処刑記録は残っているのに、彼を知る人々からカイルに関する記憶が失われていた。
やがて二人は知る。
リゼが肖像を描いた死者が蘇るたび、代わりに別の誰か一人がこの世界の記録と記憶から消えていることを。
肖像院地下に隠されていた七枚の禁じられた肖像。
皇帝暗殺事件。
二十年前に処刑されたリゼの父。
そして七枚目に描かれていた――リゼ自身の死に顔。
「お前、本当に生きてるのか?」
死んだ青年と、自分が死者だと知らない少女。
二人は、人間の生死を国家が書き換えてきた秘密を追い始める。