あらすじ
一冊の絵本が、なぜか成功者たちの人生を繋いでいた。
ノーベル賞受賞者、世界的な芸術家、著名な小説家——出身も年齢もバラバラなはずの彼らが、口を揃えて同じ絵本の名を挙げる。『まあるいリンゴ しかくいリンゴ さんかくのリンゴ』。売れなかったはずの、無名の絵本作家・御厨透が遺した一冊。
裏社会担当の雑誌記者は、畑違いの取材を命じられる。証言を重ねるうちに見えてきたのは、絵本に仕込まれた意図的な矛盾と、「試験」と呼ばれていた不穏な実験の痕跡だった。御厨の記録には「丸」「四角」「三角」、そして「潜在」という分類がある。そこに名を連ねていたのは、著名人だけではなかった——記者自身がこれまで取材してきた、裏社会の人間たちの名前も。
疑うことを教えられた子供たちは、大人になって、それぞれ違う場所へたどり着いた。花になった者。棘になった者。そして記者は、自分の名前もまた、その名簿にあったことを知る。
これは、才能の物語ではない。種を蒔かれた人間たちの、逃れられない記録だ。