あらすじ
魔法学院の卒業試験で、シオン・レイスが記録した飛距離は――零。
どれほど魔力を込めても、彼の魔法は指先から一歩も飛ばない。三年連続最下位となり、次の再試験に失敗すれば退学。魔術師になる夢も、故郷を空飛ぶ魔獣から守る道も閉ざされる。
だが、誰もいない訓練場で剣へ火を込めた夜、シオンは気づく。
彼の魔法は消えているのではない。身体と剣の中を巡り、ひとかけらも外へ逃げずに残っていたのだ。
触れた一点の内側だけを壊す、失われた近接魔術《纏式》。その才能を首席生リゼに見いだされたシオンは、火槍使いのダリオ、治癒術師ミナとともに《零距離班》を結成する。
剣だけでは、空の敵に届かない。
だから風に乗り、火鎖につかまり、水に守られ、仲間の合図を信じて飛ぶ。
やがて学院を襲った鉄翼竜の傷から、人為的に竜を操る黒い針が発見される。陰謀の先で目覚めたのは、遠距離魔法を吸収する古竜だった。
千の魔法でも止められないなら、必要なのは零距離の一撃。
これは、魔法を飛ばせない落第生が、仲間と空への道を作り、竜を殺さず救うために剣を振るう物語。