あらすじ
森で薬草を採っていた薬師の少女リリィは、いつの間にか眠ってしまっていた。
夢の中で出会った、涙を流す謎の女性。
『わたくしの子供を、どうか……』
目を覚ましたリリィの手には、夢の中で渡された大きな種があった。
「どんな花が咲くんだろう?」
大きな鉢に植えて、水をあげて、日向に置いて。
毎日の成長を楽しみにしていた――その翌朝。
「えっ?! ちょっと待って?!」
鉢は割れ、土の中から出てきたのは、こぶし大の種ではなく……
きょとんとした赤ちゃんだった。
「あの女性が言ってた《子供》って、この子のこと?!」
こうして、ちょっと変わり者の薬師と、不思議な赤ちゃんの暮らしが始まった。
「今日から私がママだよ、フィル!」
すくすく育つフィル。
初めての言葉。
初めての病気。
初めての積み木。
薬師の仕事を真似する小さな弟子。
そして――
「ママのおててのほうが、まほうだよ?」
そんな言葉に、リリィは今日も胸をいっぱいにする。
けれど、フィルの成長はあまりにも早かった。
やがて彼は、自分が何者なのかを知ることになる。
森に残された、たったひとつの命。
最後の精霊。
これは、ひとりぼっちだった精霊と、彼を拾った薬師の少女が家族になっていく物語。
――リリィの手帳に綴られた、フィルの小さな成長記録。
「大丈夫。ママはそばにいるよ?」