あらすじ
長い入院生活の末、人生を終えたはずの朔が目を覚ましたのは、見知らぬ異世界だった。
久しぶりに痛みもなく立ち上がり、自分の足でどこまでも歩ける身体を手に入れた朔は、行くあてもないまま旅を始める。
人々が暮らす町。
行き交う商人や冒険者。
人とは異なる種族。
森や山に棲む魔物たち。
そこは魔法こそ存在するものの、人々が当たり前の日常を送る世界だった。
ただ一つ、不思議な場所を除いて。
かつて人が暮らしていたにもかかわらず、ある時を境に誰も住めなくなった土地――《空白域》。
そして朔には、他の誰にも見えないものがあった。
世界から消えてしまったはずの、古い「道」。
その道を追った先で出会ったのは、危険な道を閉ざす使命を背負った女性、エル。
「その道は、開いてはいけない」
「でも、この先に何があるのか気になるんだよな」
「……あなた、いつか本当に死ぬわよ」
歩きたい朔と、閉ざしたいエル。
正反対の二人は、やがて共に世界各地を旅することになる。
水の枯れた町。
森に飲み込まれた都市。
住民だけが消えた村。
竜さえ近づくことを避ける土地。
旅先で出会う人々と過ごし、食べて、笑って、ときには魔物と戦いながら、二人は少しずつ《空白域》の奥へと足を踏み入れていく。
これは、かつて自由に歩くことのできなかった一人の男が、
誰も歩けなくなった世界を、仲間たちとゆっくり歩いていく物語。