あらすじ
「お前を、公爵家へ売る」
十六歳の成人を迎えたばかりのエレノア・ベルナールは、貧しい男爵家の借金の代わりに、王国随一の名門・アシュフォード公爵家へ嫁ぐことになった。
生まれてから一度も両親に愛されたことがなく、家事ばかりをさせられて育ったエレノアには、欲しいものも、好きなものも、将来の夢もない。
あるのはただ、「言われたことをする」という習慣だけ。
そんな彼女を妻として迎えたのは、二十五歳の若き公爵、レオンハルト・アシュフォード。
冷徹な性格と卓越した才能から「氷の公爵」と恐れられる彼もまた、妻に愛情を求めてはいなかった。
「私たちの結婚は、互いの家の利益のためだ」
「私は君を愛するつもりはない」
「はい。承知しております」
それは、愛のない契約から始まった結婚だった。
何をしていいのかわからないエレノアは、侍女に勧められるまま庭を散歩し、庭師と花を眺め、料理長から初めて「美味しい」という感情を教わっていく。
そして、少しずつ。
今まで知らなかった「楽しい」「嬉しい」「欲しい」という感情を知っていく。
そんな彼女を、レオンハルトもまた少しずつ目で追うようになっていた。
愛など必要ない。
そう思っていたはずなのに。
「……どうして、君のことがこんなに気になるんだ」
これは、愛を知らなかった少女と、愛に興味を持たなかった公爵が出会い――
やがて互いにとって、かけがえのない存在になっていく物語。
契約から始まった偽りの夫婦は、いつしか誰よりも深く、甘い愛で結ばれていく。