あらすじ
影を喰えば、その人間は世界から消える。
肉体も、痕跡も、何ひとつ残さずに。
柊木一は、そんな異能を持つ“影喰い”だ。
表向きは、首都・澄原で猫捜しから人捜しまで請け負う何でも屋。
しかし裏では、国の治安維持組織・蓮央院に監視されながら、その命令によって「消すべき人間」の影を喰らっている。
そんな一には、十四歳より前の記憶がない。
とある仕事で、一は囚われていた女性・達川百合子を救出する。
初対面のはずだった。
それなのに彼女を見た瞬間、胸を締めつけるような懐かしさと哀しみに襲われる。
さらに百合子も、十歳より前の記憶を失っていた。
そして彼女は、一を見てこう告げる。
「私、あなたのことを探していたかもしれません」
失われた記憶。
人を世界から消す“影喰い”。
二人の過去を知りながら、何かを隠している者たち。
なぜ百合子は、忘れているはずの一の名前を知っていたのか。
そして二人の記憶から、本当に消されたものとは――。
人を消すことのできる男と、忘れていることさえ知らなかった女。
大正浪漫と影が交わる、和風幻想譚。