あらすじ
田舎町の社交界に颯爽と現れた新星。
優雅にして可憐な容姿は貴婦人のみならず、妻子を持つ地方領主までもが心を奪われた。
『ディアドール・ド・ロアーヌ』
幼くして父を亡くし、母の手によって育てられたディアドールは、過剰とも呼べる愛情を受けて育つ。
幸い、莫大な遺産で生活が困窮する事はなかった一方、母の愛情は常軌を逸していた。
毎日毎夜、まるで人形を愛でるようにディアドールを着飾るだけでなく、古今東西の書籍と大陸随一の家庭教師による、徹底的な英才教育が施される。
そして、母親自らが教え込む夜伽の作法——。
ディアドールは男として生まれながら、自身の性別を女だと認識するようになってゆく。
やがてディアドールは豊富な医学知識に加え、語学、舞踊、歌劇、剣術、馬術に精通した“淑女”へと成長する。
社交界デビューを女として完璧に演じたディアドール。
その噂は宮廷にまで届き、第三王女が主催する晩餐会の招待状を得るに至る。
招かれた城に到着するが、王女は晩餐の時間になっても一向に姿を見せない。
やはり田舎の地方貴族など、王族にとって取るに足らない存在なのだろう。
そう思った矢先、ドアの奥に身を隠す車椅子の少女が、寂しげな視線を送っているのに気付く。
一夜花を思わせる姿を目にした瞬間、ディアドールは経験した事のない高揚感に包まれ、考えるよりも早く行動を起こしていた。
「ボクと踊って頂けませんか?」
誰もが正気を疑う中、ディアドールは神業とも呼べるエスコートで少女との舞踊を成立させた。
彼女こそが、第三王女システィーナ・フォン・グリザニア公だとも知らずに……。
万雷の拍手喝采を浴びる2人。
その様子を苦々しい表情で見つめる影は、憎しみと殺意に満ちていた。
誰が敵で、誰が味方なのかも解らぬまま、今夜も宮廷は華やかな舞踏会と暗殺劇が繰り広げられる。
そして、物語と並行する第三王女システィーナと、第二王子ラファエロとの三角関係。
心の安らぎを求めるディアドールは、どちらの想いに応えるのか——。
中世ヨーロッパ風の架空世界を舞台に、暗殺劇と性別の隔たりを超えた恋愛劇が交錯する。