あらすじ
政略結婚の翌朝、氷切り職人の娘エマは、夫となった辺境伯アーサーに「十年前、あなたへ氷を届けたのはわたしです」と告げた。ところが彼は、恩人の功績を奪う嘘だと決めつけ、エマを氷室の管理から外してしまう。
ならば好意で信じてもらう必要はない。エマは、申告が誤りなら仕事を失う条件で、町役場に残る十年前の切り出し台帳の公開を請求する。作業者と受取人、二つの署名。荷車引きの証言。そして、アーサー自身が信じ込んだ誤った功績板。
町の広場で記録を一つずつ確かめるうち、偽物と呼ばれた花嫁と、初恋の恩人を捜し続けた辺境伯の立場がひっくり返っていく。名誉も仕事も恋も、責任と境界を明らかにして取り戻すお話。