あらすじ
宇宙の外縁部で「時間の逆伝播(タイムバックプロパゲーション)」を試みる孤独な惑星地質学者。極地軌道上に浮かぶ観測ステーション「アイボリー・ヘンジ」で、お惚け者の脳波を乱数源にして「高純度ナンセンス」を生成し、意味論的階層闘争(アンチ・セマントン爆雷)に身を投じる新人類。
――しかし、それら壮大なSFのレイヤーはすべて、お茶の水の老舗喫茶「ラビットホール」の床に散らばる、泥だらけの応募原稿の重なり合い(サブハーモニクス)に過ぎなかったのか?
編集者の朱筆と著者の異議、科学者の量子論的解釈が入り乱れる現実のデスクワークから逃避するかのように、物語は予期せぬ加速度で崩壊を開始する。
「当店AIお断り」の札を掲げる蕎麦屋、ホヤ人間(ホモ・アルゴス)の溢れる街並み、そしてお決まりの転生劇!
五十五年の人生の果てに目を覚ましたそこは――ゼウス系の根幹神経と密着したサイバー・アクロポリス。ピンクのフリルとハートのステッキをあてがわれた文芸員が、古代ギリシャ語(コイネー)の概念弾幕を放って哲学のエイドロンを撃破する!
プロタゴラスの非存在論からバウムクーヘンの積層、アーキテクチャの自己矛盾までを極限まで敷き詰めた、文脈のドミノ倒し。手垢のついたトロープ(お約束)を一切排し、知的な戯作精神とメタフィクションの限界に挑む、怒濤のハイパーテキストSF!