あらすじ
魔術は、生まれつき才能を持つ者だけが扱える特別な力だった。
軍事、医療、建築、生活――あらゆる場所で必要とされた魔術師たちは、国家に保護され、時に特権階級として振る舞ってきた。
しかし十数年前、「魔導器」が発明される。
わずかな魔力しか持たない一般人でも、着火、照明、身体強化、攻撃魔術まで使える画期的な道具。魔導器は急速に普及し、人々の生活を豊かにした一方、それまで魔術師が独占していた仕事を次々と奪っていった。
レオン・アルヴェインは、幼少期から国家に見出され、異例の若さで国選勇者パーティに加わった天才魔術師だった。
戦闘、治癒、魔術理論、魔術工学――どれも一流。
だが彼は傲慢で、命令を無視し、年長者にも遠慮しない。
そして軍用魔導器の内部に「理論上、存在するはずのない術式」を発見したことで上層部と対立し、ついには国選勇者パーティを追放される。
数年後。
レオンは教会の片隅で医者として働きながら、夜は地下闘技場で拳を振るい、禁止されている黒魔術をひそかに研究していた。
魔導器を嫌っているように見える彼だったが、本当は違う。
魔導器は優れた技術だ。
だからこそ、理解できない。
なぜ、人々を豊かにしたこの発明の奥深くに、魂や生命、魔力接続を扱うはずの黒魔術と酷似した構造が存在するのか。
そんなある日、魔族との国境紛争を理由に、王国から再び召集令が届く。
集められたのは、なぜか大量の「職を失った元魔術師」たち。
危険な前線任務。
魔導器を使う兵士に残る奇妙な魔力痕。
魔王の命令ではないという敵兵。
そして、かつてレオンを追放へ追い込んだ者たちの影。
やがて彼は、人間と魔族、国家と個人、古い魔法と新しい技術を巻き込む巨大な陰謀へ踏み込んでいく。
これは、最強の魔術師が再び必要とされる物語ではない。
「必要とされること」を自分の価値だと思っていた青年が、魔術師を必要としなくなった世界で、それでも自分が何をするのかを選び直す物語だ。