あらすじ
二〇二六年七月十日。
四十七歳になった瀬川大地は、一本の白い百合を手に、三十三年前に恋人を失った事故現場を訪れる。
中学二年の夏。大地は恋人の藤崎希実から「会いたい」と言われながら、野球の練習を理由に断った。しかし、それは嘘だった。本当は男友達と部室で漫画を読み、ゲームをして遊ぶつもりだったのだ。
大地の言葉を信じた希実は、練習する彼の姿を見ようと自転車で学校へ向かう。その途中、飲酒運転の車にはねられ、十三歳でこの世を去った。
四番・センターとしてプロからも注目されていた大地は、希実の死を境に野球を捨てる。欠席、喧嘩、酒、嘘、投げやりな恋愛――誰にも本心を明かさないまま、自らの人生を少しずつ壊していった。
やがて大学を卒業し、仕事では成功を収めるものの、二度の結婚と離婚を経験し、三人の息子とも離れてしまう。
大地は希実を失った被害者だった。
しかし同時に、その喪失を言い訳にして、自分を愛してくれた人々を傷つけた加害者でもあった。
三十三回目の命日。白い百合を供えた大地は、亡き希実に向けて、自らの生涯を語り始める。
これは、最愛の少女を失った一人の男が、彼女のいない世界で何を失い、誰を傷つけ、それでも生き続けてしまったのかをたどる物語。
――君を失った日から、僕の人生は終わり始めた。